「ついやってしまう」体験のつくりかた 人を動かす「直感・驚き・物語」のしくみ
元任天堂の企画開発者で、Wii企画にも深く関わったという方の書かれた本。
人の心を動かし、ついやってしまうような体験デザインについてかなり平易に書かれている。
スーパーマリオはなぜ優れているのか? なぜドラクエはぱふぱふのシーンを毎回設けるのか? ラストオブアスの同行者はなぜ小憎たらしいのか?
といった実際のゲームをもとに「体験デザイン」について語られている。ぱふぱふってただの趣味じゃなかったのか……
それぞれ上の問は「面白いゲームのコツ」3段階とも呼ぶべきもので、それぞれ「直感のデザイン」「驚きのデザイン」「物語のデザイン」に分けられている。
例えば「直感のデザイン」であればこうである。
何の説明もなしに大地に放り出されたマリオを見たプレイヤーが、画面から「右に行くのかな?」と仮説を立てる。
コントローラを見て「この→っぽいボタンを押してみよう」と試行をする。
その先にはクリボーがいることで「右に行くという自分の仮説は当たっていた!」と歓喜する。
直観的な理解が喜びに繋がっているからマリオは面白い……というわけだ。
今でこそ「普通右に進むだろ」という知識と経験でゲームをしてしまうが、確かに言われればそうだなと思う。
そのゲームのルールに気付いて実践して成功する、という体験が細々あるゲームってやっぱり面白いよね。ゼルダの伝説とか。
あと、本の特徴としてはとにかく絵や図が多い。ゆる~い絵がかわいい。
また「……の理由、それは……」でページをめくらせるようにするなど、この本自体が体験デザインに基づいて作られているのがよくわかる。いっそ清々しいほどに。
そのため、単純な読み物としても面白いのでおすすめ。創作を志してなくてもためになる話だと思うし。
ただまあ本論にたっぷりページを割いている関係で、実践編(ビジネスの場での応用)はちょっと薄いかな……私の理解ではここを直接使うのはなかなか難しそう。